介護保険の介護度とは?区分や申請方法も解説
- シェフズデイサービス
- 2023.01.27
日本は、2007年から超高齢社会に突入し、今後も高齢者率があがっていくと予測されています。それに伴い介護を必要とする人も増え続けているため、介護を身近なこととして考えている方も少なくないでしょう。
家族に介護が必要になったときに、介護保険を利用できることは知っていても、受けられるサービスが介護度によって異なることまで知っている方はそれほど多くないはずです。
そこで今回は、介護度や介護度の区分、介護保険を利用するための申請方法などについてご紹介します。介護保険の利用を検討している方は、是非参考にしてみてください。
介護度とは
介護度とは、日常生活を送るにあたって、どの程度の介護を必要とするかを判定し、区分けしたものです。居住している自治体の審査により決まります。
介護度は、本人の状態に合っているサービスや支給限度額を規定する指標となっています。
介護度の区分について
介護度は、身体と認知機能の状態から判断され分類されます。大きく分けると「要支援」と「要介護」の2種類に分けられ、さらに「要支援」は2区分、「要介護」は5区分の合計7区分に分類されるのです。
介護度は、有効期限が設けられており、1~4年ごとに更新しなければいけません。また、有効期限でなくても本人の状態の変化によって、再審査を申請することができます。
介護度別認定等基準時間一覧
厚生労働省が規定した「要介護認定等基準時間」を基準として、介護度が決められています。
要介護認定等基準時間は、介護の手間がかかる時間を表したものですが、介護の必要性を量る目安となる時間であり、実際の介護時間とは異なります。
以下に介護度の区分と介護度別認定等基準時間を表にまとめました。
介護度の区分 | 介護にかかる時間の基準 |
---|---|
要支援1 | 要介護認定等基準時間が25分以上32分未満 |
要支援2 要介護1 |
要介護認定等基準時間が32分以上50分未満 |
要介護2 | 要介護認定等基準時間が50分以上70分未満 |
要介護3 | 要介護認定等基準時間が70分以上90分未満 |
要介護4 | 要介護認定等基準時間が90分以上110分未満 |
要介護5 | 要介護認定等基準時間が110分以上 |
要支援・要介護の違い
要支援と要介護では、介護保険を申請場所と受けられるサービス、身体状況が異なります。
介護保険を利用するためには、ケアプランの作成が必要です。要支援者は、ケアプランの作成を地域包括支援センターに依頼します。一方、要介護者は、居宅介護支援事業者に依頼する必要があるのです。
介護保険を利用して受けられるサービスは、要支援の場合、要介護になることを予防するために「介護予防サービス」を受けることができるようになります。一方、要介護では、日常生活を送るための「介護サービス」を受けられるようになるのです。
各区分における心身の状態は、次の見出しで詳しくご紹介しますが、簡単にまとめると以下の通りになります。
要支援は、基本的に一人で日常生活を送れるが、部分的な介助が必要である状態です。一方、要介護は、日常生活を送るために支援が必要である状態の方が該当する区分になります。
また、認知症の有無も要支援と要介護の判定には大きくかかわってきます。運動機能は問題がない方でも、軽度の記憶障害だけでなく徘徊や妄想、暴言などの周辺症状がみられる状態の方は、要介護と判定されます。
各介護度の心身の状態
ここでは、各介護区分にはどのような心身状態の方が該当するのかをご説明します。
要支援1
日常生活動作(食事や排泄、入浴など)はひとりでできるが、立ち上がりの動作や金銭管理などの手段的日常生活動作の一部にサポートが必要である状態です。
最も自立に近い状態であり、適切なサポートを受けられれば、要介護状態への予防が見込まれます。
※日常生活動作とは、食事や排泄、着脱衣、入浴、歩行といった動作です。手段的日常生活動作は、電話の使い方や買い物、食事の準備、家事、洗濯、移動、服薬管理、金銭管理といった少し複雑な動作が該当します。
要支援2
日常生活を送るための介護を必要とするまでの状態ではないが、要支援1の方と比較すると、サポートしなければいけない場面が多い状態にある方です。歩行状態が不安定、歩くのに杖や歩行補助器が必要な方などが該当します。生活習慣の改善や心身状態を維持するための運動などを行い、介護状態にならないよう予防することが大切です。
要介護1
食事や排泄、着脱衣などは身の回りのことはほとんど一人で行えるが、手段的日常生活動作の中でどれか一つでも介助が必要な人が該当します。要支援2の方に比べると手段的日常生活動作を行うことが難しく、歩行や立位保持が不安定で一部介助が必要な人です。
また、運動機能だけではなく、思考力や理解力などの低下もみられます。
要介護2
手段的日常生活動作だけではなく、食事や排泄、着脱衣などの日常的動作にも部分的な介助が必要な状態です。要介護1の方よりも、日常生活動作に対しての介護が必要になります。
しかし、要介護3の方に比べると、見守りやサポートがあれば一人で行える日常生活動作は多いです。
また、日常生活動作はできても、認知症の症状が現れており、思考力や理解力の低下や日常生活でトラブルを引き起こす人も対象です。
要介護3
立ち上がりや歩行が一人で行うことが難しく、移動するためには常に杖や歩行補助器、車椅子が必要な人が該当します。要介護2では、食事や排泄、着脱衣などの日常的活動は部分的な介助があれば一人で行うことができましたが、要介護3になると難しくなります。そのため、日常生活全般に介護が必要となり介護者の負担が増えます。
また、認知機能の低下も見られ、問題行動を引き起こし始める状態です。しかし、要介護4の方に比べると、認知機能の低下は軽度で意思疎通が取りやすい状態といえます。
要介護4
立ち上がりや歩行といった動作が難しく移動には車いすが必要です。また、自力では座っていることも難しくなり、常に全面的な介護を行う必要がある状態です。
要介護4の方は、周囲と会話で意思疎通がとれる人が対象ですが、思考力や理解力の著しい低下から簡単な意思疎通しかできないケースもみられます。しかし、一部の動作を一人で行うことができ、最低限の意思疎通は行えるため、要介護5の方よりは介護の負担は軽いです。
また、認知機能の著しい低下から、頻繁に問題行動を起こす方も要介護4の対象となります。
この区分に該当すると、介護者の負担が大きくなり負担軽減のために、特別養護老人ホームへの入居を検討する方が多いです。
要介護5
ほとんど寝たきりで、周囲と意思疎通ができない状態です。寝返りや食事なども一人でできないため、日常生活すべての面で介護が必要な人が対象になります。
要介護4の方も生活するためには常に介護が必要な状態ですが、要介護5の方は心身状態がさらに衰えた状態の方です。物を飲み込む力が衰え、口から食事を取ることが難しくなる方もいます。
介護保険認定の申請方法について
介護保険を利用するためには、市区町村に介護保険認定の申請をしなければいけません。
申請には以下のものが必要になります。
- 認定申請書
- 介護保険の被保険者証(65歳以上の方)
- 健康保険の被保険者証(65歳未満の方)
- 身分証明証
- 印鑑
- 主治医の名前や通院している病院名などが確認できるもの(診察券など)
上記のものを揃えて、役所の高齢福祉課などに相談に行ってください。
居住地の地域包括支援センターや居宅介護支援事業所が、代行して申請することも可能です。そのため、本人や家族が申請に行けない場合は、地域包括支援センターや居宅介護支援事業所に相談してみてください。
介護度の判定が出ても、本人の状態の変化や介護度に納得がいかない場合には、再審査を受けることができます。
申請の流れ
介護認定の申請から認定を受けるまでの大まかな流れは以下の通りです。
- 01. 市区町村の認定調査員による心身状態の調査
- 02. 主治医意見書の作成・提出
- 03. コンピューターによる1次判定
- 04. 認定審査会における専門家等による2次判定
- 05. 認定結果の通知
介護認定申請をしてから認定結果が出るまで約1ヶ月かかります。
申請の時期や地域によってはもう少し時間がかかるケースもあります。
介護サービスを一刻も早く受けたいようなケースでは、地域包括支援センターや居宅介護支援事業所に相談してみてください。役所の配慮により、認定調査員による調査や認定審査を早めてくれるケースもあります。
介護認定の審査方法
介護認定の審査は、「認定調査員の調査結果」と「主治医意見書の記載内容」をもとに行われます。
認定調査は、身体機能・起居動作や生活機能、認知機能、精神・行動障害、社会生活への適応を基準にした調査です。質問される項目は、50以上にのぼります。質問される項目は、「要介護認定 認定調査員テキスト2009改訂版」に記載されているため、事前に質問事項を調べて家族に協力してもらい、どのように答えたらよいのかまとめておくようにしましょう。
介護保険認定調査で注意すること
介護度は、認定審査結果が大きく影響します。認定調査を受ける際に注意すべきことをご紹介します。ポイントは、現状を正確に調査員に伝えることを心掛けることです。
現在の状況を正直に伝える
認定調査員には、現在の状況を正直に伝えることが大切です。不正確な情報や誤った情報を伝えてしまうと現状に見合った介護度に認定されなくなってしまうからです。本来なら介護サービスが必要な人が要支援と判定され、介護予防サービスしか受けられなくなってしまうと、本人だけでなく家族にも大きな影響が出てしまいます。
逆に高い介護度に認定されてしまうと、必要以上の介護サービスを利用して、本人の残っている機能を低下させ、介護度が重くなってしまうことにつながる可能性もあるでしょう。
調査員に本人の状態を伝えておく
高齢者は、聴覚が衰えている方も多く、調査員の質問をしっかり聞き取れずに、なんとなく返事をしているだけの方も中にはいます。家族が同席できない場合は、事前に調査員に聴覚が衰えていることを伝えておくことをおすすめします。伝えておけば、調査員はゆっくりと聞き取りやすい声で質問し、聞き取れたか確認しながら調査を進めてくれるでしょう。
また、脳梗塞などの後遺症で発音障害が残ってしまい、上手に話せない方もいます。それを隠そうと、「はい」や「いいえ」としか答えないと、調査員に正確な情報が伝わらなくなってしまいます。発音障害があることを事前に伝えておけば、調査員が答え方に工夫をして質問し正確な情報が伝わりやすくなる可能性も高くなるでしょう。
現在の生活や過去の病歴などをメモしておく
介護保険の認定申請をする方の中には、自分の意見を上手に相手に伝えることが苦手の方がいます。そのような方は、現在の生活で困っていることや体の状態、過去の病歴などをメモしておくことがおすすめします。
メモを家族に確認してもらってから調査に臨めば、調査員にも正確な情報が伝わりやすくなるはずです。
家族が同席する
調査員に「困っていることはない、ひとりで色々なことができる」とアピールしてしまう人がいます。他人に自分の弱みを見せたくないという気持ちからなのでしょうが、これでは調査を受けている意味がありません。
本人が話している内容が現在の生活を正確に表しているか確認するために、認定調査には家族も同席することが望ましいです。
しかし、本人が現状を偽って話していたとしても、否定するような内容を家族が話してしまうと、あとで喧嘩になってしまう可能性があります。調査員の中には、本人がいないところで話を聞くために、場を整えてくれる方もいます。しかし、そうでないケースでは送っていくふりをして、本人がいないところで調査員に正確な情報を伝えるようにしましょう。
また、本人の前で話しにくいことを事前にメモしておき、それを調査員に渡したりする方法もおすすめです。
まとめ
介護度や区分、申請方法などについてご紹介しました。
介護度は、どの程度の介護が必要かを判定し区分けしたもので、介護度によって受けられるサービスが異なります。
要支援と要介護に大きく分けられ、さらにそれぞれ2区分、5区分の合計7区分に分類されています。
現状に見合った介護度に認定されるためのポイントは、介護保険認定のための調査で真実を正直に伝えることです。
現状に見合った介護度に認定され、必要なサービスを受けて要介護者が快適に生活できる環境に整えるだけではなく、介護者の負担も減らしましょう。